さようなら、ディスタンス。






「あーねむ。ふわぁ~」


「ぶっさ」


「うっさい」


「何、寝不足? そんなに悩んでたんすか?」


「違うよ。逆。のろけていい?」


「ダメ」



稲穂がそよそよ揺れる爽やかな朝に、ちっ、と舌打ちを響かす。



一発ぶったたこうと思ったが、急に腕がひっぱられた。


彼に思いっきり寄りかかりそうになる。


かすかな温度を感じるくらいのところで、ぎりぎりバランスを保った。


なにかと思えば、一歩先に犬のウ〇コが。あぶなっ。



……調子がくるうな。くそぅ。



「そういえばさーあんたは彼女とどーなの?」



そう問いかけると、彼――祐希はイヤホンを装着しようとする手を止め、


「は? どうって?」


と、怪訝そうな表情をわたしに向けてきた。



おい、何、音楽聞こうとしてるんだよ。


偶然通学路で会っただけにしろ、一緒に高校に向かっているはずなのに。


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