さようなら、ディスタンス。
県道をそれると、田んぼと家が交互に並ぶエリアに入る。
水たまりをぴょんと避けながら、美羽ちゃんは楽しそうに一歩先を進んでいく。
その様子を見守ったまま、祐希はぼそりと言葉を発した。
「だってお前彼氏いるし、恋人未満っつったらおかしいでしょ」
一歩一歩、足を進めるごとに、肩や腕が彼にぶつかる。
彼から離れると雨に濡れてしまう。それ以上でもそれ以下でもない。
「あんただって彼女いるでしょ」
口ではそう言い返しておいたし、横目でにらんでやったけど。
さっきの隼人くんのとは違って、祐希のかすかな感触は心地よかった。
お互い恋人がいるから、境界線を超えることはない。
だから一緒にいても大丈夫なんだ。
ただ、わたしは、祐希にとって『友達以上』であることは確からしい。