さようなら、ディスタンス。
ここは行きつけの店である4号線沿いのファミレス。
すらすらと数式を書き並べるアユを横目に、窓の外を眺める。
分厚い雲によって光がさえぎられた国道は、今日も変わらずいろんな車が行ったり来たりしていた。
『この4号線って東京までつながってるんだよ』
光くんはそう言っていたけど、ここから東京までの距離はおよそ500km。新幹線ですら2時間半だ。
東京に行ったことはあるけれど、都会すぎてわたしにとっては非日常な空間だった。普通に人が生活していることが不思議に思えるくらい。
だってわたしの家から光くんの実家はおよそ3km。数ヶ月前まではチャリ10分で会いに行けた。
離れた距離、100倍以上。そりゃ遠いわ。
集中をとぎらせながらも真面目にシャーペンを動かしていると、
アユに「数学の問題集貸して」と言われ、リュックの中を探った。
「あれ?」
数学系は基本カバンに入れっぱなしなのに、見つからない。
前に使ったのは、えーと。この前、美羽ちゃんと遊んだ後に祐希とテスト範囲見直した時だよな。
ってことは……。
「うわー。祐希の家に忘れたかも」
ノートや教科書をごそごそしながらつぶやく。
すると、少し間が開いた後、
「え。あんた、家まで行ってんの?」
アユはシャーペンを置き、驚いた顔でわたしを見つめた。