さようなら、ディスタンス。
「いや、家っていうか、祐希の妹と遊んだっていうか」
「もうあんたと祐希くんが付き合えばいいじゃん」
「違う違う! お互い彼氏彼女いるから! 麻里奈さんのインスタもよく祐希のこと匂わせてるじゃん」
ついつい忘れそうになるけれど、祐希には麻里奈さんという美人な彼女がいる。
麻里奈さんのSNSは貴重な情報源。誕生日の花束以外にも、祐希とのつながりがうかがえる投稿がたくさんある。
地元にしか売っていないお菓子の写真。
玄関で撮ったらしいコーデ写真の隅に写った男物のスニーカー。
たまに見つかる『#遠距離』『#寝落ち通話』『#早く会いたい』っていうハッシュタグ。
その他にもいろいろ。
詳しくは教えてくれないけど、わたしの知らないところで、祐希はしっかり遠距離恋愛をやっているらしい。
「でもさぁ、みおりん的に祐希ってあり? なし?」
「え。まあ、お互いフリーだったらありじゃない? 気は合うし。わりとかっこいいし」
「へぇ~?」
含みを持った返事をしつつも、アユはペンをくるりと回し勉強に戻った。
『わたしのチャート式持ってる?』と祐希にラインすると、すぐに既読がつき、返事がきた。
祐希『家に2冊あるけどお前の?』
祐希『字汚いから男子のかと思った』
多少イラッとしつつも、窓の外を見る。
まだ雨は降らなさそうだ。土日で数学勉強したいし、あいつの家に行くか。
『取りに行っていい?』
祐希『今どこいる?』
『国道沿いのガスト』
祐希『ファミマで糖分買ってきて』
差し入れしろってことですか。しかも糖分って大ざっぱすぎだし。
「何かあったら教えてね」とニヤニヤしているアユと別れ、ファミレスを出た。