さようなら、ディスタンス。


真下を大型トラックが走り抜けたらしい。


歩道橋全体が大きく揺れ、一度足を止めた。



足元から吐き出される車は、ルーフパネルに曇り空を反射させながら遠ざかっていく。



でも、よくよく見たらほとんどの車は地元ナンバーだ。


たまに宮城や福島があるくらい。


大型トラックは静岡や大阪。逆に東京を通りこしてしまう。



この道が、東京まで続いている気が全くしない。



まるで、ここにいるわたしと、東京にいる光くんの心が通じ合っていないみたい。



……って、どうした自分。何ポエム的なこと考えているんだ?



テストが終われば光くんに会える。


会えばきっと、彼への想いがあふれ出す。


大好きな彼氏との幸せだった日々を思い出せるはず。



だけど――


いくらこの道路を眺めたって、視界に入るのは地元の景色だけ。



行きつけのファミレスやファーストフード、

家族とよく行く大型スーパー、

友達の親がやっているガソリンスタンド、

縦の矢印は隣の市、横の矢印はさらなる田舎を指し示す案内標識、

なかなか赤にならない信号、

奥に広がる山々。



今、わたしを取り巻く世界しか見えない。



「…………」



どうしてだろう。祐希にすごく会いたい。



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