さようなら、ディスタンス。
「はぁ~」
スマホゲーをするとログインしてるのが隼人くんにバレる=わたしがラインを未読スルーしていることもバレる。
光くんの曲を動画サイトで予習しようにも、新曲がありすぎてどれを再生すればいいか分からない。ライブ見るし今はいっか。
あーあ。明日から3連休なのにヒマだ。
ベッドに寝っ転がり、女子らしさゼロの自分の部屋を眺めた。
「…………」
目に入ったのは、机に置きっぱなしの小箱。
隣町のショッピングセンターで買ってきたピアッサー。
祐希に軽々しく空ける宣言しちゃったけど、いざとなると気持ちの準備が必要だ。
というわけで、動画サイトで『ピアス 空け方』と検索し、よさげなものをタップ。
「ふーん……まずは空けたい場所に印を入れて……」
それから耳たぶを保冷剤で冷やし、ピアッサーでパチン!
うわ、めちゃくちゃ怖そう! やっぱやめようかな。
だけど――
『いいんじゃない? そしたら片方ずつでつけれるじゃん』
祐希の言葉を思い出した。頭に手を乗せられた感触も。
ピアス穴は校則ではNG。
ダメだとわかっているからこそ、空けたい気持ちも強くなる。
別に恋人同士じゃないけど、いいよね。
友達とおそろいのことをするのは、きっと普通のことだよね。
ぼーっとしていたため、スマホ画面が真っ暗になる。
しかし、すぐに光を灯した。まだラインが動いているらしい。
「あ……」
隼人くん企画のグループライン、ではなかった。
祐希『彼氏のライブ日曜でしょ。明日何すんの?』