さようなら、ディスタンス。
『大学にはちゃんと行くんだよね』
『うん。その上で音楽もやる』
『お金は?』
『仕送りだけじゃ足りないからバイトする』
『できるの? 光くん不器用だから心配だよ』
『とりあえずやってみる。後悔したくないから』
風やエンジン音でかき消されそうなトーンなのに、言葉は力強い。
口から自然と『う……』とうめき声が出てしまった。
光くんはコンビニ袋から冷めちゃっただろう肉まんを取り出した。
2つに割るとともに、『うわぁ』と情けない声が漏れる。
『ごめん、未織、これ』
『……わたし肉なしの方でいいよ。お腹すいてないし』
おろおろする光くんから、肉あんなしの白いまんじゅうを受け取る。
ろくに肉まんも半分に分けられない光くん。
本当に東京で1人暮らしできるのか? と改めて心配に思った。