さようなら、ディスタンス。


急いでラインを立ち上げる。


苦手なフリック入力が今日はさえていた。一瞬で入力が完了した。



『麻里奈さんと会うんじゃないの?』



いや……これはダメだ! 変な深読みがバレる。


送る前に気がついてよかった。



無難に『あんた妹と花火でしょ』と返した。



グループライン未読スルー状態なのがバレるが、隼人くん関連の事情はあいつ知ってるし、まあいっか。



すぐに返事がきた。連続で2つ。



祐希『あれフェイク』


祐希『会わない?』



『明日はわたし東京行きってことなってる』


『誰にも見つかりたくない』



祐希『じゃあ俺の家』



「…………」



乗ってはいけない、でも、足を踏み入れたい。



大きなトラックが通り抜け、歩道橋がたんと揺れる。ちょっとビビるけど、その感覚は嫌いではない。



もちろん罪悪感はある。だけど、それ以上に心に湧きあがる何かがわたしを動かしていた。



『うん』とメッセージを送り、スマホを手放した。



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