さようなら、ディスタンス。






シンプルなロゴTに長めのスカート。


気合は入れすぎず、入れなさすぎずなコーデ。


ピアスを空けるかもしれないため、髪の毛はアップにした。



美羽ちゃんはお父さんお母さんと出かけているらしい。花火を見てから帰ってくるとのこと。


家には祐希以外いない。


その事実に少しだけ焦ったけれど。



「ぎゃー無理無理無理!」


「あーうるせー! 動いたら空けらんねーべ?」


「だって怖い怖い!」



2人きりの彼の部屋で。息づかいも分かるほどの距離で。


やっぱり、わたしたちはいつも通りだった。



「覚悟決めた。お願いします!」



彼の前で正座して、目をつぶり、拳をにぎった。


冷やした右耳にかすかな感触がした。とうとうわたしもピアスデビュー。



「…………」



しかし、いくら待っても衝撃は来ない。


恐る恐る目を開ける。


目の前にあったのは、笑いをこらえている祐希の顔だった。



「やべーその顔ウケる」


「もう! 早くやってよ!」



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