さようなら、ディスタンス。
☆
シンプルなロゴTに長めのスカート。
気合は入れすぎず、入れなさすぎずなコーデ。
ピアスを空けるかもしれないため、髪の毛はアップにした。
美羽ちゃんはお父さんお母さんと出かけているらしい。花火を見てから帰ってくるとのこと。
家には祐希以外いない。
その事実に少しだけ焦ったけれど。
「ぎゃー無理無理無理!」
「あーうるせー! 動いたら空けらんねーべ?」
「だって怖い怖い!」
2人きりの彼の部屋で。息づかいも分かるほどの距離で。
やっぱり、わたしたちはいつも通りだった。
「覚悟決めた。お願いします!」
彼の前で正座して、目をつぶり、拳をにぎった。
冷やした右耳にかすかな感触がした。とうとうわたしもピアスデビュー。
「…………」
しかし、いくら待っても衝撃は来ない。
恐る恐る目を開ける。
目の前にあったのは、笑いをこらえている祐希の顔だった。
「やべーその顔ウケる」
「もう! 早くやってよ!」