さようなら、ディスタンス。
わたしたちの町を縦に分断している国道4号線は、常にびゅんびゅんとスピードを上げた車が行き交い、
ファミレスやカラオケ、ユニクロしまむら吉野家など行きつけのお店が一定の距離を持って並んでいる。
さびれた駅前通りよりも、よっぽど都会的な場所。
まあ、東京の人からしたらここなんてレゴやトミカシリーズで作ったミニチュアの街並み以下だろうな。
ぼんやりとそんなことを考えながら、国道沿いの狭い歩道を進む。
下校ラッシュの今。時々、自転車に乗った同じ高校の生徒たちが、肘ぎりぎりの距離を通り抜けていく。
歩道橋の階段を上り終えた時、光くんは足を止めた。
『そういえば。未織、知ってる?』
『何を?』
『この4号線って東京までつながってるんだよ』
わたしに話しかけているくせに、その視線は遠くまで続くアスファルトの先へと向けられていた。
『え、そうなの? 栃木あたりが終点だと思ってた』
『おれもびっくりした。部屋探しの時上野のあたり歩いてたら、普通に4号線の看板あったから』
『へぇー』
足元では、大小さまざまな車が行ったり来たり。
歩道橋の上にいると、ここがみんなのスタート地点であり、ゴール地点でもあるゲートのように思えてきた。
視界のその先、遥か彼方を見ている光くんの隣。
わたしは歩道橋の手すりに肘をかけ、足元に吸い込まれ、吐き出されていく車やトラックを眺めていた。