さようなら、ディスタンス。


『未織。離ればなれになっても、空はつながってる』


『はい?』


思わず、視線を彼へと戻した。


『ってよく言うけど、そもそも空が遠いじゃん。4号線だったら近い感じしない?』


光くんは首をかしげ、優しい目でわたしを見つめている。


言ってる内容は若干ウザいけど、急に距離をつめられ胸がドキッとしてしまった。



『離れててもこの道で繋がってる、ってこと?』



そう聞くと、彼はふわりと髪を揺らし微笑んだ。



『そんなの気休めだよ。……ちゃんとラインできる?』


『うん。頑張る』


『電話も?』


『するよ』


『ちょくちょく帰ってくる?』


『ゴールデンウィークや夏休みは帰るよ』


『わたしも時々行っていい?』


『うん、おいで』



袖に入れたままの手が引っ張られる。その力に身を任せる。


人気のない歩道橋の上。わたしは彼にぎゅっと抱きしめられていた。


3月の冷たい風に吹かれながらも、くっついた部分から温もりが体中へと巡っていった。


< 6 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop