さようなら、ディスタンス。







――ドンドンドンドン!



チャイムを無視して居留守を使ったはずなのに、ドアが誰かに叩かれ続けている。なにかの集金かな。


まあいいや。黙っていればそのうち去るだろう。



――ドドッドドドドドッドドド!



うるさいな。早く去ってくれよ。今家には誰もいないんだよ。



――ドンタンドドタンドンタンドドタン!



しつこいな。しかもノックでエイトビートを刻むんじゃない。



――ドンドンタン! ドンドンタン!



なんでウィーウィルロックユーなんだよ。



――ドコドコドコドコドコドコドコドーンドーンドンドーン!



紅を叩くな!



「はぁ……」



さすがにこれ以上やられると近所迷惑だ。ここを追い出されるわけにはいかない。



仕方なくよろよろと立ち上がり、散らかりっぱなしの部屋を抜け、ドアへと向かった。


スコープから外をのぞく。指で塞がれているらしく、真黒だった。



「あのさぁ、うるさい……」


「よかった生きてる! じゃねぇ、お前スタ練飛ばすなよ!」



薄い鉄製のドアを空けた瞬間なだれこんできたのは、同じバンドでドラムをしている卓くんだった。


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