さようなら、ディスタンス。
『浮気、しないよね?』
『するわけないじゃん。未織こそ男友達多いし心配』
『友達は友達じゃん。わたしが好きなのは光くんだよ』
そう伝えると、包み込む腕に力が入った。
わたしも彼の胸元にしがみつく。
この幸せが永遠のものだったらいいのに。そう思ったけれど。
『おれ、東京で頑張るから。応援してくれたら嬉しい』
耳元に落とされた囁きに涙が出そうになった。
わたしと一緒にいることを選ばなかったこと。
いつの間にか東京行きを決断していたこと。
もう彼の心はこの町にないんだってこと。
そんなわたしの気持ちをくみ取ったのか、それとも本当は未来が怖いのか。
どっちなのかは分からない。
『おれも未織だけが大好きだよ』
震えた声でつぶやいた後、冷たい唇を重ねてきた。
薄暗くなっていく国道4号線。行き交う車には少しずつ明かりが灯されていった。