さようなら、ディスタンス。


それから夏休みの話で盛り上がった。


2ヶ月近くもある空白期間。クミ子&ピロくんはフェスやバーベキューやサークル旅行など、夏休みを満喫するらしい。


僕は僕でライブやレコーディングやPV撮影など、予定はたくさんだ。もちろん帰省もする予定。



「すごいね、PVって。どの曲撮るの?」


「今度のレコーディングの出来にもよるけど、『東京』が候補かなぁ」


「『東京』といえば! 光くんは夏休み、地元に残してきた大切な子に会うんでしょ?」


「いいなぁ~遠距離だと再会した時すげー燃えるっしょ。どんな子なん?」



「うっ……」



目をキラキラさせたクミ子とピロくんに詰め寄られる。



まあ、この2人になら言ってもいいか。


そう思い、この前のライブに彼女が来てたことを教えると、まじで!? どのへんにいた? 写真見せて! と更に身を乗り出してきた。



スマホを操作し、未織との写真を見せる。



ピロくんは、おお~素朴な感じでかわいいじゃん、とすぐ感想を伝えてきた。


僕は、結局フラれちゃったんだけどね、と続けようとした、が。



「私……この子、見た」



急にクミ子は真顔になり、低い声でそうつぶやいた。


マジ? とスマホをじっくり見つめるピロくん。つけものを半分噛んだところで止まる僕。



わいわい声が響く店内で、クミ子は真剣な表情のまま続けた。



「ライブ終わった時、ボロボロに泣いてたよ」


「え。泣いてた?」


「うん。気づいたらすぐいなくなっちゃったけど」



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