さようなら、ディスタンス。







電話がつながったため、普段よりワントーン高い声を出した。



「はい。今、自分、家庭教師先を探してまして、もしお子さんの勉強で心配なことなどございましたら……」


『何で家の電話番号知ってるの? 家に子どもがいるのもどうして知ってるの?』


「あ……その……」



こう言われた時は、どう切り返すか。


えーと。あれ。どうするんだっけ。


何度かこのパターンには応じてきたはずなのに、言葉が出てこない。



『どうせ怪しい業者でしょ? 本当迷惑。二度と電話してこないで!』



ガチャプツッ!! ツーツー……。



そうですね。本当に僕は怪しい業者なのかもしれないですね。


でもそれだけでどうして怒鳴られなきゃいけないんですかね。迷惑なら電話でなきゃいいのに。今どき家電にかかってくる電話なんてセールスばっかりでしょうが。



まあ、僕なんてこの世界で迷惑な存在。いらない存在だよ。どうせ。



「はぁ……」



いつも心を無にして挑んできた、高時給のテレアポバイト。


なぜか今日は心が痛んで、集中できない。


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