さようなら、ディスタンス。





湯朝さんの軽ミニバンに揺られて6時間。



「もう関西に地方妻できたん?」と驚く卓くんに、「違うよ。地元の友達と会うの」とマジレスして、僕は京都駅のあたりで降ろしてもらった。



京都の夏は蒸し暑いと聞いていたが、その通りだった。


夕方なのに、空にも地面にも吸収されないような熱気がそこらじゅうに漂っていた。



「わ~光~! 久しぶりー!」



待ち合わせ場所はマルイ世界地図前。到着すると、人混みの奥にすぐ麻里奈を見つけることができた。


目が合った瞬間、彼女は華やかな笑顔を浮かべ駆け寄ってきた。



「久しぶり。元気だった?」


「元気だよ~! 光はー? バンド順調みたいじゃん!」


「まあ、ぼちぼちね」



彼女のテンションについていけず、自然と苦笑いになってしまう。


そんな僕に構わず、麻里奈は「お店、予約してあるんだ。行こー」と言い、腕を絡めてきた。



半ば連行されるような形で繁華街へと向かった。


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