さようなら、ディスタンス。
カタカナだらけの食べ物を口にし、お互いの近況を話した。
麻里奈は大学にサークルにバイトに遊びと毎日忙しいらしい。
「麻里奈も夏休みでしょ。実家には帰らないの?」と聞くと、
「えー帰んないよ。こっちでの生活満喫してるし、遠いしお金かかるしめんどくさい」
彼女は料理をスマホ撮影しながら、半笑いでそう言った。
中学・高校と目立つ女子グループの中で、楽しそうにしていたのに。
すでに麻里奈の心は地元から離れているらしい。
僕よりも遠い場所で、新しい生活を楽しみ、たくましく生きている。素直にすごいなと思った。
地元の友達とは連絡とってるの? と聞こうとした時。
「あちい~!」「飲も飲も!」「ねぇ、あれ……!」
女性たちの大声が店内に響き、自然とその方向に目が行った。
声の正体は、お店に入ってきた派手派手しい酔っ払い女子3人組。
「…………」
麻里奈も彼女たちをぼーっと眺めている。
かと思えば、慌てた様子で僕に視線を戻した。
どしたの? と尋ねると、彼女はこそっと両手を合わせ、小声で話しかけてきた。
「ごめん。ちょっとだけ彼氏のフリしてくれない?」と。
――はい?