さようなら、ディスタンス。
あっという間に、さっきの女子3人に囲まれた。
「おおー麻里奈じゃん!」「ほんとだー」「うわ、男といる!」
3人ともそれなりに可愛くてそれなりにお洒落。
僕の大学にもいるような、読者モデルの劣化版みたいな女子たち。(って口に出したらボコられそうだな……)
どうやら麻里奈の知り合いらしい。
「わー偶然! そっちは女子会?」
麻里奈も彼女たちと同じテンションで応える。
何となく予想はできていた。
すぐに女子たちの注目は僕へと移った。
「ねー麻里奈、もしかして、これが噂の彼?」
「マジ? うっそ実物? 超かっこいい!」
「こんばんは! うちら麻里奈の大学の友達っす!」
女子たちにのぞきこまれ、話しかけられる僕。
微笑みを浮かべ会釈で返すと、女子たちはきゃーきゃーと更に騒ぎ出す。
バンドで人前に立つことが多いためか、女子受けする表情を作るのは割と得意だ。まさかここで役立つとは。
「やべぇ、心臓撃ち抜かれた」「ドン引きするくらいイケメン!」「ねー麻里奈、名前なんだっけ?」
などと騒ぎ続ける3人。対する麻里奈は、
「もう! 久々のデートなんだから邪魔しないでよ!」
と、わざとらしく口を尖らせ、追い払う仕草をした。
「うーわ、ノロケだるっ!」「ずるーい。うちにも男紹介して~」「ほら行くよ~。じゃあ、京都楽しんでってねー」
ようやく彼女たちは店の奥のテーブルへと向かって行った。
無事にことをやりすごした安心感と、ウソに付き合った罪悪感が混ざり合った。