さようなら、ディスタンス。


「あのさ、どういうこと?」



こっそり麻里奈に詰め寄ると、彼女は「ホントごめん」と言い、理由を話してくれた。


大学で変な男に付きまとわれてるから、地元に彼氏がいることにしてる、とのこと。



「や~、彼氏いるって宣言したら、みんな会いたい会いたいってうるさくて。誤解されてもここ京都だし、知ってる人いないから大丈夫でしょ? そのうち別れたことにしとくから」


「…………」



未織にフラれたばかりの僕。


茶番に付き合ったことに対していい気分はしなかったが、「そうなんだ。大変だね」と答えておいた。



きっと、本当に麻里奈は麻里奈でいろいろ大変なんだろうな、と思った。




再び女子たちに絡まれる前に、早めにお店を出た。


いいスポットあるんだよ、と言われ次に連れていかれたのは鴨川沿い。



「光、昔っから遅刻多かったじゃん。大学ちゃんと行ってる?」


「あはは~やばいじゃん! 大学なんて授業を選ぶ時が重要だよ。友達いっぱい作ってシフト組むの」


「うわ、テレアポのバイトしてたの? 辞めて正解だよ。光は……そうだなぁ、夜型だしバーテンとかいいんじゃない?」



大学生活のこと、バイトのこと、おすすめスポットのこと、新しくできた友達のこと。


土手に座り、川を眺めながらたくさん喋った。



麻里奈から、地元に関する話は一切なかった。


本当に、この場所で新しい人生を歩み始めていた。


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