さようなら、ディスタンス。


それから音楽好きな旧友と喋っていたが、


「光~こっちではライブしないのー? あたし絶対行くのにー!」


と騒がしい系の女子がなだれ込んできた。



この子はかつて麻里奈と仲が良かったリーダータイプの女子。


中学の頃より体型がふっくらしていた。



「もう、アスカ酔っぱらいすぎー」


「光くん久しぶりー! バンドはどう?」



すぐに彼女の取り巻きたちにも囲まれた。


さっき喋っていた友達が隅っこに追いやられ、申し訳ない気持ちになる。



特に話題もないため、


「この前大阪でライブした時、麻里奈が来てくれたよ」


と麻里奈関連の話を振った。



「へぇ、麻里奈か」「あー懐かしいね」



意外なことに、彼女たちの反応は鈍いものだった。



「そういえば今日麻里奈いないよね?」


「一応声かけたけど、忙しいから来れないって」


「まあ毎日忙しそうだもんねー。アップする写真撮ったりするのとか」



1人がスマホをいじり、ほら見てよー、と大声を出した。



「今日は今年5回目の浴衣デーだそうですよ」



手のひらサイズの画面を彩っているのは、麻里奈の自撮り写真。


彼女は鮮やかなピンク色の浴衣をまとい、まぶしい笑顔を浮かべている。



似合ってるね、と素直な感想を言おうとしたが。



「うーわ。これ、麻里奈化粧濃すぎじゃね?」


「確かに詐欺ってる~。昔はそんな可愛くなかったじゃん」


「あいつメイクに1時間くらいかけるらしいよ~信じられない」


「浴衣5回目って。いちいち言わなくていいのに。忙しいアピールまじうぜぇ~」



麻里奈への悪口大会がスタートし、どんどんヒートアップしていく。


その様子に嫌悪感をいだいた。


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