さようなら、ディスタンス。
☆
次の日は、夕方まで楽器屋やライブハウスを回り、夜は実家でご飯を食べた。
あっという間に東京に戻る時間が近づいてきた。
「じゃあ、行くね」
最低限の荷物を手にして、コンバースに足を入れる。
「東京は息苦しい街だか何だか知らないけど、ちゃんと飯は食いなさい。後で野菜送っとくから」
後ろから母に声をかけられた。
「ありがとう。できれば野菜よりも仕送りを……」
「単位ちゃんと取れてたらね!」
ぎくり。成績って実家にも届くんだっけ。
仕送りアップは絶望的か……。戻ったら新しいバイト探さなきゃな。
続いて、父にこっそり声をかけられた。
「おかあちゃん厳しいこと言うけど、光の曲、ユーツーブで全部チェックしてっけよ」
「あはは、そうなんだ」
「光、立派なユーツーバーさなれよ!」
父の勘違いと発音の悪さに笑いながら、実家を出た。
今、いるべきじゃないけど、時々帰っていい場所。それが地元。