さようなら、ディスタンス。







次の日は、夕方まで楽器屋やライブハウスを回り、夜は実家でご飯を食べた。


あっという間に東京に戻る時間が近づいてきた。



「じゃあ、行くね」



最低限の荷物を手にして、コンバースに足を入れる。



「東京は息苦しい街だか何だか知らないけど、ちゃんと飯は食いなさい。後で野菜送っとくから」



後ろから母に声をかけられた。



「ありがとう。できれば野菜よりも仕送りを……」


「単位ちゃんと取れてたらね!」



ぎくり。成績って実家にも届くんだっけ。


仕送りアップは絶望的か……。戻ったら新しいバイト探さなきゃな。



続いて、父にこっそり声をかけられた。



「おかあちゃん厳しいこと言うけど、光の曲、ユーツーブで全部チェックしてっけよ」


「あはは、そうなんだ」


「光、立派なユーツーバーさなれよ!」



父の勘違いと発音の悪さに笑いながら、実家を出た。



今、いるべきじゃないけど、時々帰っていい場所。それが地元。


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