極上恋愛～エリート御曹司は狙った獲物を逃がさない～

ショックで声が出なかったが、高野の目を見てコクコク頷く。

そして、震える手でバッグを掴み、小走りで秘書室を出ようとする私を片桐君は引き止めた。

「ねえ、藤宮さん、前園さんの正体知ってます？」

「正体？」

足を止めて聞き返せば、高野が「馬鹿、言うな！」と片桐君を止めようとする。

だが、片桐君は構わず、意地悪く告げた。

「知らないんですね。前園さんは、前園製薬の御曹司ですよ」

ドカンと雷に打たれたようなショックが私を襲う。

前園製薬は、日本一大きな製薬会社だ。

その会社の規模はTAKANOの十倍以上で、世界でも有数の大企業。

自分の身体を抱き締めるようにしてこの場を逃げ出し、会社を出た。

片桐君の落とした爆弾が私の胸をかき乱す。

吐き気がするくらい気分が悪かった。

「前園が……前園製薬の御曹司。ハハッ……私、何も知らなかった」