千一夜物語
唇と唇が重なってから数十秒後――ようやく事態に気付いた澪は、息ができなくなって顔を真っ赤にしながらまた黎の胸を強く押そうとしたが力が入らず、一旦離れた唇がまた斜めに近付いてきて避け切れずに再び唇が重なった。
同意もなく強引に唇を奪われて怒るところだが…怒るどころか喜んでいる自分にも気付いていた。
ぼうっとして力が入らず身を預けていると、舌を絡められてはじめての体験に澪の身体は大きく跳ねて、黎を昂らせた。
「れ、黎さん…っ!」
「俺のことを少しでも好いてくれているのなら、少し互いに考える時間を作ろう。…俺は神羅にちゃんと話をする。お前は俺との今後を考えてほしい」
「今後って…?」
澪の垂れた目元が潤んでまた泣きそうになると、黎は澪の顔を優しく肩に押し付けて小さく息をついた。
「嫁にしたいと思った女は生涯にふたりしか居ない。神羅と…お前だ」
「…黎さん…」
仮面の男を待ってはいたが、顔を見たこともない許嫁は何人も妻を持っていいと聞かされて、半ば腹は据わっていたようなものだった。
仮面の男がいつまで経っても現れず、許嫁が優しい男だったら、それでもいいか、と――
親の期待を裏切りたくないとも思っていたし、こんなじゃじゃ馬を受け入れてくれる男が居るのかと不安になることもあった。
だが黎は…仮面の男は、こんな自分を受け入れて好いてくれていると言う。
「だから早まって出て行くな。時間はかかるかもしれないが、神羅を説得する。お前にも俺のことをもっと知ってもらいたい。…もう、仮面の男のことはいいんだな?」
黎はまだ気付いていない。
仮面の男が黎であることを知っていることを。
「…うん…。でも…私…実はじゃじゃ馬だし…我が儘だし…言うこと聞かなくて呆れられるかも…」
「お前の性格は大体知っている。見せてない面があるのなら今後見せてほしい。だから…」
――また唇を求められている、と分かると、澪は目を閉じた。
すぐ重なった唇は最初は優しかったが、それは激しいものへと変わり、澪は翻弄されながらも黎に身を委ねて深く恋に落ちていった。
同意もなく強引に唇を奪われて怒るところだが…怒るどころか喜んでいる自分にも気付いていた。
ぼうっとして力が入らず身を預けていると、舌を絡められてはじめての体験に澪の身体は大きく跳ねて、黎を昂らせた。
「れ、黎さん…っ!」
「俺のことを少しでも好いてくれているのなら、少し互いに考える時間を作ろう。…俺は神羅にちゃんと話をする。お前は俺との今後を考えてほしい」
「今後って…?」
澪の垂れた目元が潤んでまた泣きそうになると、黎は澪の顔を優しく肩に押し付けて小さく息をついた。
「嫁にしたいと思った女は生涯にふたりしか居ない。神羅と…お前だ」
「…黎さん…」
仮面の男を待ってはいたが、顔を見たこともない許嫁は何人も妻を持っていいと聞かされて、半ば腹は据わっていたようなものだった。
仮面の男がいつまで経っても現れず、許嫁が優しい男だったら、それでもいいか、と――
親の期待を裏切りたくないとも思っていたし、こんなじゃじゃ馬を受け入れてくれる男が居るのかと不安になることもあった。
だが黎は…仮面の男は、こんな自分を受け入れて好いてくれていると言う。
「だから早まって出て行くな。時間はかかるかもしれないが、神羅を説得する。お前にも俺のことをもっと知ってもらいたい。…もう、仮面の男のことはいいんだな?」
黎はまだ気付いていない。
仮面の男が黎であることを知っていることを。
「…うん…。でも…私…実はじゃじゃ馬だし…我が儘だし…言うこと聞かなくて呆れられるかも…」
「お前の性格は大体知っている。見せてない面があるのなら今後見せてほしい。だから…」
――また唇を求められている、と分かると、澪は目を閉じた。
すぐ重なった唇は最初は優しかったが、それは激しいものへと変わり、澪は翻弄されながらも黎に身を委ねて深く恋に落ちていった。