千一夜物語
至って真顔で膝を叩かれても…。

困惑する澪につい虐めたいという欲求が沸いた黎は、膝を叩くのをやめてくいっと酒を飲んだ。


「嫌ならいい」


「失礼しますっ」


さっと黎の膝に上がり込んだ澪は、ごつごつした黎の身体の感触に内心絶叫しつつ、うなじに注がれている視線を感じていた。

肌が真っ赤になるまで磨き上げて香油も塗って、仕上がりは完璧なはず…

それともまだ幼さの抜けない自分には色気を感じず手を出す気もないということなのか?


「お前…とんでもなく柔らかいな」


「えっ?そ、そう?自分だと分かんない」


「いや、これは想像以上に…」


もち肌で柔肌な澪のやわらかさに思わず身体に腕を回してあちこち触り始めた黎の手の動きにくすぐったくなって身じろぎしていると――黎が耳たぶを齧ってきて、愛情表現の表れに嬉しくなって思わず声が漏れた。


「柔らかい。気持ちいい。ずっと触っていても飽きない」


背後から肩口に侵入してきた黎の手を反射的に押し止めたが、それでも強引に差し込まれて肩まではだけさせられてまた注がれる視線を感じた。

…黎がどんな顔をしているか振り返ってみてみたい――

恐る恐る肩越しに振り返ると、黎は少し開いた唇からのぞく牙で澪の首筋をまた甘噛みした。


「黎…さん…」


「お前が月のものの最中でなければ抱いていたんだが、今夜はなんとか堪えておこう」


「!?月の…もの?」


最中ではないのにそう言ってきた黎にきょとんとしたが――そういえば黒縫が部屋の外で黎と話していた時そんなことを言って追い返そうとしていたなと思い出して赤面。


「う、うん、ごめんなさい」


「だが途中まではする」


「え?きゃあっ!」


上半身まで脱がされ、また黎も脱いで均整な身体を澪に見せた。

唇が重なり、音が鳴り、経験がなくつい声が漏れてしまう澪の純朴さに黎の支配欲が競り上がる。


「知らないことは全て俺が教えてやる」


息を上げながらも、頷いた。
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