千一夜物語
惚れた女が下着姿になっている状況下で期待しない男など居ない。
衣擦れの音がして今まさに澪がそんなあられもない姿になっていることに喉が鳴ってしまった悪路王は、おどおどしつつ澪に話しかけた。
「振り返ってもいいか?」
「…うん…」
身体ごと振り返ると澪は相変わらず胸に桃色の着物を抱きしめていたが、可憐な顔をしていながらも豊満な胸の持ち主であることは疑いようがなかった。
俯いて顔を上げない澪を目を合わそうとにじり寄ると、澪が少し後退って緊張した声を上げた。
「あの、それ以上近付かないで」
「でも寒いだろ?もうちょっと火の近くに居た方がいい。お、釜戸の傍に薪があるからそれをくべよう」
澪を緊張させまいと明るい声を出して立ち上がろうとした時――着物の裾を踏んでしまって思いきり身体が傾いた悪路王は、澪を押し倒すようにして覆い被さる形になった。
驚きのあまり目を見開いて声も出ない澪を組み敷いている状況に悪路王は息を呑んで瞬時に状況を整理した。
澪は初心で可憐で…恐らくまだ男を知らない。
ということは黎はまだ澪に手を出しておらず、今澪を我が物にできたらと考えると息が上がって澪に顔を寄せた。
「お姫さん…!お、俺…っ」
「きゃ、ぁ…っ、やめ…っ」
唇を奪われまいと澪が両手で口元を覆った時――着物がずれて今までひた隠しにしていた胸元が乱れて、‟それ”が見えた。
‟それ”が見えた時――悪路王の形相は一気に恐ろしいものへと変わり、押し殺した声を出した。
「それは…鬼頭の旦那がつけたものか…」
――胸元には数多くの唇の痕。
つまり澪はすでに…黎に抱かれたということなのか。
「…帝もあんたも自分の物にしようなんて…鬼頭の旦那は鬼の中の鬼ってことだな…」
欲しいものは全て奪い取る。
それは鬼族の心情であり、当然のこと。
「許せねえ…!」
奪ってやる。
尊敬しているあんたから、大事なものを全て。
衣擦れの音がして今まさに澪がそんなあられもない姿になっていることに喉が鳴ってしまった悪路王は、おどおどしつつ澪に話しかけた。
「振り返ってもいいか?」
「…うん…」
身体ごと振り返ると澪は相変わらず胸に桃色の着物を抱きしめていたが、可憐な顔をしていながらも豊満な胸の持ち主であることは疑いようがなかった。
俯いて顔を上げない澪を目を合わそうとにじり寄ると、澪が少し後退って緊張した声を上げた。
「あの、それ以上近付かないで」
「でも寒いだろ?もうちょっと火の近くに居た方がいい。お、釜戸の傍に薪があるからそれをくべよう」
澪を緊張させまいと明るい声を出して立ち上がろうとした時――着物の裾を踏んでしまって思いきり身体が傾いた悪路王は、澪を押し倒すようにして覆い被さる形になった。
驚きのあまり目を見開いて声も出ない澪を組み敷いている状況に悪路王は息を呑んで瞬時に状況を整理した。
澪は初心で可憐で…恐らくまだ男を知らない。
ということは黎はまだ澪に手を出しておらず、今澪を我が物にできたらと考えると息が上がって澪に顔を寄せた。
「お姫さん…!お、俺…っ」
「きゃ、ぁ…っ、やめ…っ」
唇を奪われまいと澪が両手で口元を覆った時――着物がずれて今までひた隠しにしていた胸元が乱れて、‟それ”が見えた。
‟それ”が見えた時――悪路王の形相は一気に恐ろしいものへと変わり、押し殺した声を出した。
「それは…鬼頭の旦那がつけたものか…」
――胸元には数多くの唇の痕。
つまり澪はすでに…黎に抱かれたということなのか。
「…帝もあんたも自分の物にしようなんて…鬼頭の旦那は鬼の中の鬼ってことだな…」
欲しいものは全て奪い取る。
それは鬼族の心情であり、当然のこと。
「許せねえ…!」
奪ってやる。
尊敬しているあんたから、大事なものを全て。