千一夜物語
澪はほぼ全裸だった。
その状態でしがみ付かれていた黎が宙に視線を彷徨わせていると、はっと我に返った澪がぺたんと座り込んで身体を丸めた。
「み…見た!?」
「…見たが、どうせいずれ嫌になるほど見ることになる」
「嫌になるほどって…言い方気を付けて!それでも恥ずかしいんだから!」
澪の着物を拾い上げた黎は、その肩にぱさりと落として背を向けると、逃走した悪路王がどこに向かったのかを考えて――ひとつの可能性を見出した。
「まさかあの男…神羅の元に向かったんじゃないだろうな」
「!だとすれば大変!黎さん、すぐ戻らないと!」
「お前が着替えたらすぐ戻る。澪…危ない目に遭わせたな。すまない」
なんとか素早く着替えを終えた澪は、何故か謝った黎の背中に抱き着いて頬ずりをして同じように謝った。
「私こそごめんなさい。七尾さんが悪路王さんだってこと最後まで見抜けなくて」
「まさか悪路王がお前に惚れているとは思ってもいなかったが」
「私は黎さん一筋です!」
きっぱり言われると恥ずかしくなって押し黙っていると、狗神姿の牙が黒縫を背に乗せたまま鼻面を引き戸に押し付けて呼びかけた。
「おーい黎様ー!悪路王が一反木綿に乗って逃げてったぞー!追いかけようぜー!」
「黒縫!ああ黒縫…大丈夫!?怪我は!?」
牙の背から降りた黒縫は前足を引きずりながら澪に駆け寄って腕に顔を擦りつけて何度も謝った。
『私が居ながら申し訳ありません…』
「私たち油断してたもんね、仕方ないよ。じゃあ黎さん、すぐ戻らなくちゃ。神羅ちゃんが危ないかも!」
「神羅の傍には玉藻がついている。そうそう危ないことにはならないだろう」
――だがそれは誤算だった。
黎の想像以上に悪路王側についている妖が多く、そのほぼすべてが浮浪町に向かっていて、それにいち早く気付いたのは玉藻の前のみ。
「来ましたわね…!」
玉藻の前は急激に雲行きが怪しくなった空を睨んで妖気を体内にため込んだ。
その状態でしがみ付かれていた黎が宙に視線を彷徨わせていると、はっと我に返った澪がぺたんと座り込んで身体を丸めた。
「み…見た!?」
「…見たが、どうせいずれ嫌になるほど見ることになる」
「嫌になるほどって…言い方気を付けて!それでも恥ずかしいんだから!」
澪の着物を拾い上げた黎は、その肩にぱさりと落として背を向けると、逃走した悪路王がどこに向かったのかを考えて――ひとつの可能性を見出した。
「まさかあの男…神羅の元に向かったんじゃないだろうな」
「!だとすれば大変!黎さん、すぐ戻らないと!」
「お前が着替えたらすぐ戻る。澪…危ない目に遭わせたな。すまない」
なんとか素早く着替えを終えた澪は、何故か謝った黎の背中に抱き着いて頬ずりをして同じように謝った。
「私こそごめんなさい。七尾さんが悪路王さんだってこと最後まで見抜けなくて」
「まさか悪路王がお前に惚れているとは思ってもいなかったが」
「私は黎さん一筋です!」
きっぱり言われると恥ずかしくなって押し黙っていると、狗神姿の牙が黒縫を背に乗せたまま鼻面を引き戸に押し付けて呼びかけた。
「おーい黎様ー!悪路王が一反木綿に乗って逃げてったぞー!追いかけようぜー!」
「黒縫!ああ黒縫…大丈夫!?怪我は!?」
牙の背から降りた黒縫は前足を引きずりながら澪に駆け寄って腕に顔を擦りつけて何度も謝った。
『私が居ながら申し訳ありません…』
「私たち油断してたもんね、仕方ないよ。じゃあ黎さん、すぐ戻らなくちゃ。神羅ちゃんが危ないかも!」
「神羅の傍には玉藻がついている。そうそう危ないことにはならないだろう」
――だがそれは誤算だった。
黎の想像以上に悪路王側についている妖が多く、そのほぼすべてが浮浪町に向かっていて、それにいち早く気付いたのは玉藻の前のみ。
「来ましたわね…!」
玉藻の前は急激に雲行きが怪しくなった空を睨んで妖気を体内にため込んだ。