千一夜物語
烏天狗は黎に駆け寄ると、どこかの立札に貼ってあった朝廷からのお達しが書かれてある紙を渡した。
黎は目を通して――目を見開いた。
「そんな…馬鹿な…っ!」
「主さま?なんて書いてあるの?」
「…朝廷へ行ってくる」
「え?ちょっと待…」
訳が分からずも止めようと声をかけたものの、黎は単身平安町の朝廷の方角へ飛んで駆けて行ってしまい、慌てた牙が跡を追った。
黎の手から落ちた紙を拾い上げて目を通した澪は――それで黎の行動が腑に落ちながらも、両手で口を覆ってぺたんと座り込んだ。
「神羅ちゃん…っ」
――黎は朝廷の上空に着くと、慌ただしく廊下を駆け回っている官らの姿が見えた。
…それはそうだろう、と思った。
書かれてある内容が真実ならば、これから朝廷は紛糾状態となる。
「どこだ…どこに居る…!」
御所の上空へ移動して気を集中してくまなく目下目的の人物を探していると――神羅の部屋でその気配を察知して、庭に降り立った。
「業平!」
「!幽玄町の…黎殿か…。今はそなたと話している時間はない。また後日改めて…」
「ふざけるな!神羅が…神羅の子が死産だったというのは真実か!?」
朝廷の発表では――子は泣き声を上げることなく死産だったということと、帝は子を弔うため出家して尼になるという内容で、黎は声を荒げて業平の胸倉を掴んだ。
「そう知らせを受けた!我が子は死産…!神羅様は出家…!私は一体どうすれば…!」
神羅が退位したとなれば、直系の者が居なくなる。
今は遠縁の者であってもその座に座らせなければならず、業平は畳を何度も叩いて嘆いていた。
――寺の外で、確かに赤子の産声を聞いた。
だから…死産のはずがない。
「…お前はこれからどうするつもりだ?」
「神羅様はもうここへは戻って来ないおつもりだ…。私とは…離縁ということになるだろう。…関白として、右大臣たちと協力してなんとか政を続けなければ…」
黎はその嘆きを最後まで聞くことなく再び御所を発った。
やるべきことは、もう決まっている。
神羅――
どこへ逃げようとも、お前は俺のものだ。
黎は目を通して――目を見開いた。
「そんな…馬鹿な…っ!」
「主さま?なんて書いてあるの?」
「…朝廷へ行ってくる」
「え?ちょっと待…」
訳が分からずも止めようと声をかけたものの、黎は単身平安町の朝廷の方角へ飛んで駆けて行ってしまい、慌てた牙が跡を追った。
黎の手から落ちた紙を拾い上げて目を通した澪は――それで黎の行動が腑に落ちながらも、両手で口を覆ってぺたんと座り込んだ。
「神羅ちゃん…っ」
――黎は朝廷の上空に着くと、慌ただしく廊下を駆け回っている官らの姿が見えた。
…それはそうだろう、と思った。
書かれてある内容が真実ならば、これから朝廷は紛糾状態となる。
「どこだ…どこに居る…!」
御所の上空へ移動して気を集中してくまなく目下目的の人物を探していると――神羅の部屋でその気配を察知して、庭に降り立った。
「業平!」
「!幽玄町の…黎殿か…。今はそなたと話している時間はない。また後日改めて…」
「ふざけるな!神羅が…神羅の子が死産だったというのは真実か!?」
朝廷の発表では――子は泣き声を上げることなく死産だったということと、帝は子を弔うため出家して尼になるという内容で、黎は声を荒げて業平の胸倉を掴んだ。
「そう知らせを受けた!我が子は死産…!神羅様は出家…!私は一体どうすれば…!」
神羅が退位したとなれば、直系の者が居なくなる。
今は遠縁の者であってもその座に座らせなければならず、業平は畳を何度も叩いて嘆いていた。
――寺の外で、確かに赤子の産声を聞いた。
だから…死産のはずがない。
「…お前はこれからどうするつもりだ?」
「神羅様はもうここへは戻って来ないおつもりだ…。私とは…離縁ということになるだろう。…関白として、右大臣たちと協力してなんとか政を続けなければ…」
黎はその嘆きを最後まで聞くことなく再び御所を発った。
やるべきことは、もう決まっている。
神羅――
どこへ逃げようとも、お前は俺のものだ。