千一夜物語
あまりに突然のことで、唖然とした。
だが唇からはやわらかい感触が伝わって来て、黎に唇を奪われたのだと知った神羅は黎の胸を押して思い切り抵抗したが――さらに深く口付けを受けて、身体から力が抜けた。
…唇を奪われたのは、はじめてだった。
巫女として神に全てを捧げて生きてきたため身も心も清らかなままだったのに――よりにもよってそれを奪ったのは人ではなく、背筋が震えるほど美しい妖。
驚きのあまり目を見開いていると、黎は一瞬唇を離してにやりと笑った。
「色気のない女だな。目くらい閉じろ」
「な…っ、何をす…っ」
手で目を覆われて何も見えなくなると、再び唇を奪われて舌を絡められて押し倒された神羅は、胸元に侵入しようとする黎の手を思い切り引っ掻いた。
「痛いじゃないか」
「やめ、なさい!私は帝!この国の礎となる者です!」
「対価をよこせと言っているんだ。だからお前の身体でいい」
「妖などにこの身を委ねるものですか!」
だが三度唇を塞がれて情熱的に求められると、抵抗も虚しく身体から力が抜けてしまい、息が乱れてきた。
「よし、大人しくなったな。じゃあ頂こうか」
このままでは本当に操を奪われてしまう――
抵抗しようにも黎の目に燈る青白い炎が揺らめく様に見惚れてしまうと、神社の外から何者かの声が聞こえた。
「…様ー!黎様―!どこだー!?」
「ちっ、あいつめ追いかけて来たか」
身体を起こした黎はすっかり興醒めしてしまって乱れた胸元をかき抱いている神羅を残したまま外に出た。
「牙…来るなと言ったはずだが」
「だってなんか変な妖気を感じたからさ。この骨、なんだ?」
「俺が殺した。仕方ない、今日はもう帰るか」
振り向いた黎は、必死に胸元を隠そうとしている神羅ににっこり笑いかけた。
「また明日来る」
「次にまた私を襲おうとするならば…殺しますよ!」
「やれるものならやってみろ」
からから笑いながら、牙と共に御所を後にした。
だが唇からはやわらかい感触が伝わって来て、黎に唇を奪われたのだと知った神羅は黎の胸を押して思い切り抵抗したが――さらに深く口付けを受けて、身体から力が抜けた。
…唇を奪われたのは、はじめてだった。
巫女として神に全てを捧げて生きてきたため身も心も清らかなままだったのに――よりにもよってそれを奪ったのは人ではなく、背筋が震えるほど美しい妖。
驚きのあまり目を見開いていると、黎は一瞬唇を離してにやりと笑った。
「色気のない女だな。目くらい閉じろ」
「な…っ、何をす…っ」
手で目を覆われて何も見えなくなると、再び唇を奪われて舌を絡められて押し倒された神羅は、胸元に侵入しようとする黎の手を思い切り引っ掻いた。
「痛いじゃないか」
「やめ、なさい!私は帝!この国の礎となる者です!」
「対価をよこせと言っているんだ。だからお前の身体でいい」
「妖などにこの身を委ねるものですか!」
だが三度唇を塞がれて情熱的に求められると、抵抗も虚しく身体から力が抜けてしまい、息が乱れてきた。
「よし、大人しくなったな。じゃあ頂こうか」
このままでは本当に操を奪われてしまう――
抵抗しようにも黎の目に燈る青白い炎が揺らめく様に見惚れてしまうと、神社の外から何者かの声が聞こえた。
「…様ー!黎様―!どこだー!?」
「ちっ、あいつめ追いかけて来たか」
身体を起こした黎はすっかり興醒めしてしまって乱れた胸元をかき抱いている神羅を残したまま外に出た。
「牙…来るなと言ったはずだが」
「だってなんか変な妖気を感じたからさ。この骨、なんだ?」
「俺が殺した。仕方ない、今日はもう帰るか」
振り向いた黎は、必死に胸元を隠そうとしている神羅ににっこり笑いかけた。
「また明日来る」
「次にまた私を襲おうとするならば…殺しますよ!」
「やれるものならやってみろ」
からから笑いながら、牙と共に御所を後にした。