千一夜物語
澪は久々に会った両親たちと話に花が咲き、神羅は黎の母たちと話に花が咲いて、一応護衛のために置いていた玉藻の前がまだ暗い空を見上げた時、同じように庭を見た。


すると黎がいつもよりかなり早く戻って来たため、澪と神羅は縁側に出て黎を出迎えた。


「黎明さんご苦労様でした。早かったねっ」


「今日くらいはな。お前たちも疲れただろう?風呂に入って寝……なんだ?」


父ににやにやされた黎が嫌な予感がして身を引くと、ずいっと近寄って来て肩を抱かれてぼそり。


「黎明、初夜だぞ。妻はふたり。どうするつもりだ?」


「……親父が気にすることじゃない。あっちに行け」


「俺と同じならば、ふむ、そうだな、これからまず…」


「今日はこれでお開きにしよう。玉藻、牙、皆を部屋に案内してやってくれ」


「承知」


黎は澪と神羅の肩を叩いて促すと、廊下に出た。


「風呂に入って来い。俺も後で入るから、俺の部屋で待っていてくれ」


「うん」


「…ええ」


――今夜が初夜だということは、もちろん澪も神羅も分かっている。

神羅は一旦澪と別れると、桂を迎えに行った。

この子が居るのだから、何かあるはずがない。


「桂、よく頑張りましたね。母様とお部屋に行きましょう」


父母たちは屋敷の反対側にある客間に通されたため、ばったり出くわすことはない。

しっかりおくるみに包んで寒さを遮断すると、黎の部屋に行って桂を渡して澪と一緒に風呂に入った。
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