千一夜物語
あたたかい――

背中からあたたかい何かに包み込まれているような気がして安心する――

だけど…寝息が聞こえる…?


起き上がろうとしたが、がっちり腰に回された手があった。

大きくて…確かこの前もこんな感じで…


「れ…黎…!?」


すやすや。

愕然としてその寝顔を見ていると、遅れて自分自身も裸だったことに気付いて悲鳴を上げかけて両手で手を覆った。

しかも黎も見た感じ裸…

慌てて畳に落ちていた浴衣を拾い上げて胸に押し当ててひとまず隠すと、状況を整理するため昨晩何かが起きたのか考えた。

確か…あの女が現れて、黎が布団の中に潜んで、襲って来ようとしたところを布団を払いのけて視界を奪って、そして刀で…


「それから記憶がない…まさか…裸なのは…そういう仲に…!?」


「昨晩のお前は可愛かったぞ」


「!?」


混乱しているうちに黎が目覚めて背骨に沿ってつっと指を這わせてきたため、ぞくりとしながら振り返った時すでに黎は身体を起こして欠伸をしていた。


「お、お主…まさか私は一夜を…?」


「まあ一夜を共にしたのは事実だが、抱いてはいない。せっかくの好機だったんだがいかんせん弱っている女を襲う趣味はないからな」


ほっとしたが、しかし全裸――


「何故私は裸…」


「邪気にあてられて昏倒したお前の熱を下げたりあたためたりしたからな。余計な世話だったか?」


「い…いいえ…ありがとう」


「ご褒美をくれ」


「え?」


――言葉を紡げなかった。

黎に唇を唇で塞がれて――


噛みつくように、唇を奪われた。
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