年下御曹司は初恋の君を離さない

 初めは無理だと渋った。大いに渋ったのだ。しかし……
『名前と同様。プライベートのときに敬語なんて使ったら……容赦しませんから』と再び脅されてしまったのだ。

 彼に『友紀ちゃん』と誰もいないところでなら言っても恥ずかしくはない。だって、昔は彼のことをそう呼んでいたのは事実だから。
 でも、こうして人の前―――それも家族の前―――で呼ぶとなると話は変わってくる。

 ここで『副社長』などと秘書モードで呼んだら後が恐ろしい。それを先ほどイヤと言うほど思い知ったばかりだ。

 容赦しないよ。彼の言葉が再びよみがえってくる。
 きっとこれはいつまで経っても消えることはないように思う。

 いや、時間とともにボディーブローのように効いてくるんじゃないかと思うほど、恐ろしく妖しく……そして半端なく格好よかった。

 そして、結局彼の思うツボとなってしまう私。
 ああ、もう。年下の男の子にどうしてこうも心を乱されてしまうのだろうか。

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