年下御曹司は初恋の君を離さない
「マジ、怒らずに最後まで聞いてくれよ」
「……わかった」

 ここまで紀彦が口を開くことを渋っているのは、相当な理由がありそうだ。

 私が怒ってしまったら、紀彦から真実を聞く機会を失ってしまう。聞き終えるまでは怒るのは我慢しなくてはいけないだろう。
 覚悟を決めて紀彦を見ると、彼は渋々口を開いた。

「実は、友紀とは高校の同級生で」
「同級生って!! じゃあ、同じ高校に通っていたってこと?」
「まぁ、そういうこと。だけど、友紀が高校通っていた頃に姉ちゃんと知り合いだったなんて知らなかったんだよな」
「そう……なんだ」

 確かに紀彦をはじめ、家族には友紀ちゃんの存在を口にしたことはなかったと思う。

 痴漢に遭っていた女子高生を助けた、なんて言ったら家族が心配するのはわかりきっていたからだ。

 大学入学と同時に痴漢に何度も遭い、ストーカー紛いなことを私がされていたことは家族の皆が知っていること。だからこそ、再びターゲットにされるような行為をしたなんて言ったら心配をかけることが目に見えていたからだ。

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