年下御曹司は初恋の君を離さない
「……うまく誘導されている気がする」
小さく呟くと、隣で歩いている友紀ちゃんが不思議な顔をして聞いてきた。
「ん? 未来さん、何か言った?」
「え? う、ううん。なんでもない」
慌ててそっぽを向き、エレベーターに乗り込む。
庫内はぎゅうぎゅう詰めになっている。恐らく、エレベーターに乗り込んだ大半の人は八階にある催事場に向かう人たちだろう。
エレベーターの奥まで押し込まれた私は、身動きが取れない状況だ。
先ほどまで乗っていた電車でもそうだったが、こちらの方がもっと酷い。
「大丈夫? 未来さん」
「う、うん……」
友紀ちゃんは私の頭上あたりの壁に手を置き、私に覆い被さるような形でいる。
私が人に潰されないよう守ってくれているのだと思う。
電車の中でもそうだったが、こうして私を守ってくれることに嬉しさが込みあげてくる。
私は今まで、女性と扱われることは少なかった。