年下御曹司は初恋の君を離さない

 特に大学生の頃は、わざとユニセックスな装いをして、男性に見られるようにしていたのだ。だからこそ、女扱いしてくれる人はいなかった。

 社会人になった今は、ユニセックスな格好をしなくなったし、こうして髪も長く伸ばしている。
 一応女性に見えているはずだし、会社においても女性扱いはしてもらえていると思う。

 しかし、男性から見て、私には女の魅力が足りていないのだ。
 だからこそ、誰も私のことを恋人にしたいと思わず、声を掛けてもらえないのだろう。
 それは今に限ったことじゃない。昔から……

 過去の記憶に思いを馳せていると、忘れていたい過去の記憶が私の心を突き刺していく。
 より私の心の傷を深めたのは、大学生の頃……

 その傷は今も尚、私を苦しめている。

「未来さん、着きましたよ?」
「え?」

 ハッと我に返り、友紀ちゃんを見上げる。
 そこには心配そうに私の顔を見つめている彼の視線とぶつかった。
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