年下御曹司は初恋の君を離さない
「やっぱり今日は帰りましょうか?」
「だ、大丈夫! ちょっと考え事していただけだから」
慌てて顔の前で手を振って大丈夫だとアピールすると、友紀ちゃんはホッと表情を緩めた。
「それならいいんですけど……」
そう言いながらも、やっぱりどこかで不安なのだろう。心配そうな瞳は私を今も尚見つめている。
そういう一つ一つのことが嬉しくて、くすぐったく感じた。
ふふ、と声に出して笑うと、友紀ちゃんもようやくホッとしたように目を細める。
「大丈夫ならよかった。でも、何を考えていたんですか?」
「え?」
まさか友紀ちゃんに女性扱いされて嬉しかった、とは言いづらい。
言葉を濁すと、彼はグイッと私により顔を近づけてきた。
「気になりますね」
「べ、別に……たいしたことじゃないわよ?」
笑ってごまかそうとしたのだが、友紀ちゃんはなかなかにしつこい。
友紀ちゃんをなんとか交わし、私はソファーから立ち上がった。