年下御曹司は初恋の君を離さない
「とにかく、今からは仕事なんですからね」
「違う。未来さんとデート。だからプライベート」
「なんだか最初に言っていたのとは違うようですね、副社長」
「やめて。今は絶対に名前で呼んでよ、未来さん」
今度は耳を垂らして目を潤ませている子犬みたいだ。ただ、図体は子犬とは言えないほど大きいけど。
コロコロ変わる友紀ちゃんの表情を見ていたら、もっと色々な表情をした友紀ちゃんが見てみたいという感情が湧き出てきた。
そんな自分の心境の変化にビックリしつつ、最近の私は彼のことばかりを考えていたことに気づく。
彼の行動、言動一つ一つが私の心に染み入るのがわかった瞬間、あり得ないほど身体が熱くなった。
自分の中に芽生え始めている感情に気がついてしまったからだ。
初恋を経験したときも、こんなふうに身体が熱くなるようなことはなかった。
「未来さん? 行こう?」
今度はオトナな色気を醸し出して、友紀ちゃんは私の手を引く。
彼の大きな手から伝わる熱を感じ、ますます私の頬は熱を帯びた。
「未来さん?」
「い、行く」
フンフンと大きく頷く私に、友紀ちゃんは驚いた顔をしたのちに、とびっきりの笑顔を浮かべたのだった。