年下御曹司は初恋の君を離さない
「本当だ、すごい」
私たちが絶賛していると、その店の和菓子職人さんが声をかけてきた。
「ありがとうございます。見た目だけなく、和菓子としても美味しく召し上がっていただける品です。素材からとてもこだわっております」
「見ただけでもクオリティが高いことはわかります。でも、食べてしまうのは惜しいですよね。こんなに美しいのに」
「ですが、和菓子は食べてなんぼですから」
そう言って苦笑する職人さんに、「確かに!」と友紀ちゃんは屈託なく笑う。
今日は勉強のために和菓子博にやってきたわけだが、一個人として楽しむつもりなのだろう。
肩の力を抜いているプライベート仕様の彼に、私の心がまた躍り出す。
友紀ちゃんの新たな一面を見る度に、私の心は否応もなくドキドキしてしまう。
それを誤魔化すように、真剣な表情を浮かべて和菓子を見つめる。
だが、心の中はというと胸の高鳴りで思考回路は混線気味だ。
その職人さんに「それでは」と声をかけたあと、ゆっくりと一つ一つのお店を見て行く。
すると、友紀ちゃんが「あった。あそこだ」と目を輝かせた。