年下御曹司は初恋の君を離さない
「今日はファーストコンタクトなんだ」
「それなら、ますますしっかり挨拶をしなくては」
ああ、痛恨のミスだ。頭を抱えている私に、友紀ちゃんは柔らかい口調で声をかけてきた。
「正式な場所じゃないし、顔合わせ程度だと思ってくれればいいよ」
「副社長」
「ほら、ダメでしょ? ビジネスモードになっちゃ」
「……ビジネスですし」
「はは。違う、今日はプライベートでふらっと和菓子博に来ただけ。そこで前から目星をつけていた店が出店していた。それなら顔をちょっと売っておこうかなぁ~っていう気楽な感じ」
「……」
「それに、あちらがビジネスモードにはなってくれないんじゃないかなぁ。だから、プライベートなノリの方がちょうど良い」
「え?」
どういう意味だろう。ようやく顔を上げた私は疑問を素直にぶつける。
友紀ちゃんはそんな私を見て、少しだけ真面目な表情になった。
「このお店、超老舗和菓子店なんだよね」
「はい、それは私も知っています」
「あ、秘書モードに入っちゃうの? 未来さん」
残念そうな友紀ちゃんを無視し、私は背筋を伸ばした。
そして、彼の顔を真剣な表情で見つめると、彼もビジネスモードに入る。