年下御曹司は初恋の君を離さない
「和菓子せせらぎのネームバリューは国内外でもかなり高い。だからこそ、うちみたいにコラボ商品を作りたいと願望している大手製菓会社が多い。だが、どんなにいい条件を提示しても首を縦に振ってはくれないと有名なんだ」
「……そのせせらぎに、小華和堂も声をかけたいということですか」
「そういうこと。俺としてはネームバリューは二の次。ここの和菓子にぞっこんなんだよね」
和菓子屋せせらぎの前には、ひっきりなしにお客さんがやってくる。
客足は常にある状態で、どれだけこのお店のファンが多いのか物語っているようだ。
その有名老舗和菓子店に、我が社も他の企業と同様で声をかけたいらしい。
だが、問題がある。うちは洋菓子専門だ。それを友紀ちゃんに指摘すると、彼は目を丸くさせたあと、挑むように凜々しい表情になる。
「だからこそ、だよ。未来さん」
「え?」
「面白そうじゃん、和菓子と洋菓子の融合。出来なさそうだからこそ、挑戦してみる価値があると思わない?」
友紀ちゃんの瞳がキラキラと輝いていて、尚且つビジネスマンらしい野心も見え隠れしている。
オトナな一面を見せつけられて、私は直視できなくなった。
慌てて彼から視線を逸らしたあと、私は小さく呟く。