年下御曹司は初恋の君を離さない

「彼氏とやってきたって……」
「うーん、じゃあ訂正してあげよう。近い将来彼氏になる男と、にね」

 反論は受け付けません、そう言いながら、友紀ちゃんは和菓子店せせらぎの店舗へと足を向けていく。
 もちろん、手は繋いだままだ。これでは、本当に友紀ちゃんが言っていた設定になってしまう。

「ね、ねぇ、友紀ちゃん。手を繋ぐのはまずくない?」
「どうして?」

 何が悪いのかわからない、そんな表情を浮かべる彼に小声で注意をする。

「だって、もし今後商談に移るのなら、私たちが会社関係者だってわかっちゃうでしょ?」
「そうだね。だけど、何か不都合でも?」
「不都合だらけよ。小華和堂の副社長とその専属秘書が休日に手を繋いでいたなんて知れたら……困ることになる!」
「未来さんが困るだけで、俺は困らないけど?」
「友紀ちゃん!!」

 自分でもビックリするほど大きな声を出してしまい、チラリと周りにいた人々が私に視線を向けてきた。
 慌てて口を押させた私は、「すみません」と小声で謝ったあと、身体を小さくさせる。
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