年下御曹司は初恋の君を離さない

 その理由に、私は気づいてしまった。だからこそ恥ずかしさが込みあげてきてしまうのだ。

 彼の腕の中から逃げ出そうとする私なのに、どうしてか手に力が入らない。
 それは、無言で〝離さないで〟そんなふうに懇願しているのと同じことだ。

 頭がかなり混乱している。頭だけではない、心も身体も全部だ。

「冗談じゃないよ」
「え?」
「冗談じゃない。未来さんが好き。ずっとこうしていたい」
「っ!」

 今、顔を上げることができない。自分の顔が真っ赤に染まっていることぐらい、わかっているからだ。
 うー、と涙目になりながら固まり続けていると、ようやく友紀ちゃんは私を解放してくれた。

「あ……」

 ようやく解放された安堵と、寂しさと。複雑に居り混じった心に、私は戸惑いしか見当たらない。

 先ほどまでウッディ系の香りに包まれていたのに、それがなくなった瞬間。確かに私は「もう少しあのままでいたかった」と思ってしまった。
 それがまた、私の羞恥心をあおり立ててしまう。
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