年下御曹司は初恋の君を離さない
再び唸っている私を見て、友紀ちゃんは余裕の表情で笑っている。
彼は私より年下なのに、どうしてこうも私の心を揺さぶってくるのだろうか。
クールな女でここまでやってきたのに、それが友紀ちゃんの前だとすべて水の泡と化してしまう。
なんだかとても悔しく感じ、視線を勢いよく彼から逸らす。
すると、私の肩を友紀ちゃんが抱いてきた。
「ちょ、ちょっと!」
再び抱きしめられる。警戒と、そしてある種の悦びで身体がビクッと反応したのだが、それは私の勘違いだとすぐに思い知らされた
。
「ほら、もっとこっちにおいで」
友紀ちゃんは私の肩を抱きしめ、何かから守るように私の身体を引き寄せた。
その瞬間、「スミマセン、通ります」という声が聞こえる。
何事かと視線を向けると、ガラガラと大きな台車を引いた店員が横を通り過ぎていった。
どうやらその台車にぶつかると危ないと思った友紀ちゃんが助けてくれただけのようだ。
ホッと胸を撫で下ろしたあとで、ジワジワと頬が熱くなる。