年下御曹司は初恋の君を離さない
表向きでは勘違いしてしまったことで赤恥をかいたのように見えるかもしれない。だが、本当はもっと違うことで赤面していたのだ。
それは……私の身体が彼に近づいて喜んでいることに気がついたから。
何も言わずに固まったままの私に、友紀ちゃんはキラキラした笑顔を向けてきた。
「ほら、未来さん。列に並ぼう!」
「う、うん」
友紀ちゃんに促されてもう一度列に並ぶと、彼は意地悪く耳元で囁く。
「未来さん、顔が真っ赤」
「そ、そんなことは……」
「もしかして、俺にまた抱きしめられると思った?」
「っ!」
図星だが、それを認めるには心のゆとりがなさ過ぎた。
ツンと澄まして私は腰に手を置く。
「そんなことないわよ」
態度とは裏腹で、私の声の弱いこと。絶対に友紀ちゃんに指摘されるだろうと思ったが、それ以上彼は私をからかうこともせず、ただ私の手を握りしめてほほ笑んだ。