年下御曹司は初恋の君を離さない
友紀ちゃんはプライベートを強調してはいたが、これはビジネスチャンスだ。
そこで、私が水を差してはいけない。小華和堂の副社長秘書が、この絶好の機会を踏みにじる訳にはいかないだろう。
あれこれ質問をして和菓子を見ている友紀ちゃんに、藤司さんは人懐っこい笑みを浮かべる。
「もしかして、同業者の方ですか?」
藤司さんの言葉を聞き、友紀ちゃんはビジネスマンの顔をしながら用意していた名刺を彼に差し出した。
「私、小華和と申します」
「小華和堂の副社長さんでしたか……!」
藤司さんは友紀ちゃんから渡された名刺を受け取ると、納得したように頷いた。
だが、すぐに藤司さんは申し訳なさそうに眉を下げる。
「申し訳ありません。お名刺折角いただいたのに、あいにく私はオフ日でして。販売ブースの様子が気になって来ただけなので名刺を持っていなくて……」
「いえ、こちらが勝手にお伺いしただけですから」
恐縮している藤司さんに対し、友紀ちゃんは手を軽く横に振る。
それを見てホッとした様子の藤司さんは、友紀ちゃんに自己紹介し始めた。