年下御曹司は初恋の君を離さない
「私、せせらぎの専務をしております。藤司と申します。名刺は後日御社に送らせていただきますね」
「とんでもない。私がせせらぎさんへお邪魔させていただきますから。そのときにいただけますか?」
「わざわざご足労いただくのは申し訳ありませんから」
丁重に断ろうとする藤司さんに、友紀ちゃんは野心を隠さない目で彼を見つめた。
「長いお付き合いをさせていただきたいですから、お邪魔させていただきます」
「……なるほど」
友紀ちゃんの返答に、ビジネスの思惑があると判断したのだろう。
藤司さんは何かを考え込むようにしながら、私に視線を向けてきたのだ。
ドクン―――
一気に胸の鼓動が高鳴る。早く視線を逸らしてもらいたい一心で固まり続ける私を見て、なぜか眉間に皺を寄せた。
どうしてそんな表情をされなくてはいけないのか。
無言で不服を抱いていると、藤司さんは私に和菓子が乗ったお盆を差し出してきた。