年下御曹司は初恋の君を離さない
「もちろん、私からもご挨拶させていただきたいです」
「では、どうぞこちらへ」
藤司さんは、私と友紀ちゃんを列から連れだし、バックヤードの入り口へと案内した。
そこには壮年のスーツ姿の男性がいて、藤司さんが声をかける。
「社長、ちょっとよろしいですか」
「どうした?」
友紀ちゃんと私を見て、小さく会釈をしたあと、社長と呼ばれた男性は藤司さんに向き直る。
「こちら、小華和堂の副社長をしていらっしゃる、小華和友紀さんです」
「あ……ああ! 小華和堂の!」
目を見開いて驚いた様子のせせらぎの社長は胸元のポケットから名刺を取り出し、友紀ちゃんに差し出してきた。
それにならい、友紀ちゃんも名刺をせせらぎの社長に丁寧に差し出す。
すると、せせらぎの社長は意味ありげに藤司さんに視線を向けた。