年下御曹司は初恋の君を離さない
「謙也がこうして他企業の方と会わせようとするのは初めてだな」
「……ええ」
小さく頷く藤司さんを見て、せせらぎの社長は何かを感じ取ったように小さく頷いた。
「私はあまり外交的なことは苦手でしてね。あまり他企業の方とはお会いしないのですよ。すべて専務である謙也が取り仕切っているのですが……」
恐らくひっきりなしにお菓子メーカーなどが、老舗和菓子店で名が知れている『せせらぎ』とのビジネスチャンスを狙って社長との面談を依頼しているはずだ。
だが、どの企業とも手を組まないと有名な会社だと、先ほど友紀ちゃんが言っていた。
表向きは〝外交が不向き〟と見させておき、その実は体よくお断りをしているということなのだろう。
きっとその選別を藤司さんがしているはずだ。
その藤司さんが、自ら友紀ちゃんとせせらぎの社長を引き合わせた。
小華和堂とタッグを組んでもいいと判断したからなのだろうか。
その謎は早々と本人の口で明らかになった。藤司さんは、せせらぎの社長に小さく笑みを浮かべる。
「小華和さんとは絶対にお会いした方がいいと判断しました」
「ほぉ」
感心したように藤司さんを見つめる社長に、藤司さんは射貫くような目で友紀ちゃんを見つめてきた。