年下御曹司は初恋の君を離さない
「噂はかねがね聞いております。小華和の御曹司は、切れ者だと」
「そう思っていただけて光栄ですが、私は目の前の仕事をただ淡々にこなしているだけです」
サラリと躱す友紀ちゃんには、余裕さえも感じられた。
私は隣にいる友紀ちゃんにソッと視線を向ける。
こちらも表向きは穏やかな経営者の顔をしていた。だが、その目はすでにチャンスを狙っているように見える。さすがは、友紀ちゃんだ。
なぜだか自分が誇らしくなっていると、藤司さんはせせらぎの社長の傍らにいた秘書に視線を向ける。
すると、その秘書は心得たように小さく頷く。
「社長。せっかく小華和様とお会いできたのですから、お茶を召し上がりながらお話させていただいてはいかがでしょう?」
「ああ、そうだな! どうでしょう? 小華和さん」
「光栄です。ぜひ、色々とお話を伺いたいです」
二つ返事の友紀ちゃんを見て、せせらぎの社長は大きく頷いた。