年下御曹司は初恋の君を離さない
「元気そうでなによりだ」
「ええ。おかげさまで」
精一杯の強がりをした。
本当は貴方からの言葉に打ちのめされ、もう二度と恋なんてしないと誓ったなんてことは口が裂けても言いたくはない。
あのときに壊れてしまった恋心については、誰にも内緒だ。
キュッと唇を噛みしめ、私は藤司さんの顔を負けじと見つめ返した。
大学四年の春。そろそろサークル引退を考える頃だったろうか。
私の一生を揺るがすような出来事があった。
もともと男性不信だった私。だが、藤司さんと出会ったことによって、ゆっくりではあったがトラウマも少しずつ消えて、代わりに私の心に芽生えたのは恋心だった。
知らず知らずのうちに、憧れから好きという感情を持って藤司さんを見つめるようになっていたあの頃。
彼も少なからず私のことを思ってくれている。そんなふうに感じていた。
だが、それは私の独りよがり。勘違いだった。若気の至り、まさに言葉の通りだった。
藤司が久しぶりにサークルに顔を出す。そんな知らせを受けて、私は心弾む様子を押し隠すことができないほど浮かれていた。