年下御曹司は初恋の君を離さない
一足先に社会人となってしまった藤司さんと、今度はサークル以外のところで会いたい。
それはずっとずっと願っていたことだった。
だが、なかなか勇気がだせず、メールも電話も出来ずじまいだった私。
だからこそ、今日こそは覚悟を決めて彼に声をかけようと思っていたのだ。
ここ最近、女性らしい格好もするようになったのは、全部藤司さんのおかげである。
彼が私のトラウマの原因を取り払い、その傷さえも癒やしてくれた。
だからこそ今、私は恋をすることができたのだ。全部、全部、藤司さんのおかげ。
張り裂けそうな気持ちをどうしても伝えたい。その一心で藤司さんを探していると、彼の後ろ姿を見つけた。
逸る気持ちを抑えつつ声をかけようとしたのだが、グッと堪える。
そこには藤司さんと、同じサークルに所属していた後輩である畠山さんが何やら話し込んでいたのだ。
ただならぬ雰囲気で、私の心臓は嫌な音を立てた。
畠山さんのご実家は茶道の大家で、お嬢様だということは聞いたことがある。
キレイな容姿で誰もが一目置くような人物だ。ただ、どうしてだか私には風当たりが強く、ここ最近は特に意識されているように感じていた。